4.「教育」を深掘りする
さて今回は、これまでとは少し異なるテーマである「教育」にスポットを当てて考えてみたいと思います。
スズキ・メソードはご存じの通り音楽を主体とした「教育法」、つまりこのテーマはスズキの核心部分に当たるわけですが、その中心にはいつもひとつの考えが大きく鎮座しています。
その考えを皆さんと共有しながら、お話を進めてまいりたいと思います。
教えたら終わり?
スズキ・メソードの大切な教えの一つに、「教育とは教え育てることである」という考え方があります。一見、「そんなの見ての通り当たり前」のことなのですが、これがなかなか実践されていないことが多いと感じます。
一体、どういうことなのでしょうか?
この考えを理解するために、敢えて自分が物事を教わる立場、教育される側に身を置いて考えてみましょう。
例えば仕事の場面、業務上避けて通れないスキルを先輩から教わるとして、アプリケーションなどの使い方をたった一度言われただけで、その日から永続的にその知識やスキルが身に付くものでしょうか?
もちろん、ごくごく一部にそうした方はいらっしゃるでしょうが、多くの方にとって答えは「ノー」だと思います。
何でも、一度教わっただけで出来るようになったら、人生苦労はしません!
たいていの場合、「この間教わったものの、いざ一人でやろうと思ったらやり方をよく覚えていない・・・」「メモを取ってその通りにやっているはずなのに、何故かうまくいかない!」ということの連続ですよね。
育ててくれる人の存在
そんな時、自分にそのスキルがある程度定着するまで、近くで見守ってくださる方がいたら、そして更にそのスキルを足固めし、少しずつでもより高めることを手伝ってくださるなら、どんなに安心して、しかも早く自分を伸ばすことができるでしょうか。
つまり、「教わる」だけでなく、「育てて」もらうことで、目標の達成がどんどんと近づいてくることが想像できると思います。
さてここでもう一度、自分を「教わる側」から「教える側」の立場に戻してみると、「教える」段階と、「育てる」段階がセットになって、はじめて「教育」と言えることが分かります。
職場でも学校でも課外活動でもご家庭でも、あなたの普段の指導現場では、「教える」にプラスして、「育てる」フェーズはありますでしょうか?

強い集団とは
しかしながら、実際は、こんな理想的な環境はなかなかありません。
それどころか、「自分もそんな風に教えてくれる人は周りにいなかった。一人で自分なりに解決してきたおかげで、今の自分があるのだ。むしろそうした環境は甘えを生む。」とお考えになる方も、少なからずいらっしゃることでしょう。
しかし、人には得意不得意があり、得意な分野では少しの教えですぐに結果を残せても、不得意なフィールドで必要な力を発揮するまでには時間を要する場合があります。そしてそうした、力をつけるまでに時間の必要な方でも、一旦身に付いてしまえば、周囲と遜色なく働き、むしろ頼れる存在となることもあるでしょう。
教える側の心構えが無いがゆえに、まだ力を十分に発揮できないでいる人を「力不足」として切り捨て、即戦力だけを残していく場面を見かけることがあります。そうして淘汰していけば、その場の仕事は回るのかもしれません。
ですがそれでは、得意分野以外はリテラシーの低い、非常に狭い志向を持った人だけが群がる集団ができてしまいます。
得意不得意はあれど、苦手な分野もある程度は克服することで、これまで見えなかった角度で物を見ることができ、多様な視野と価値観を持った人間が育てられたならば、またそうした人材が集まるグループであるならば、これは集団として大きな強みとなるでしょう。

教わる側には問題は無いのか?
一方で確かに、教わる側が「どうせ忘れてもまた教えてもらえば良い」という態度で甘えていては、身に付くものも身に付かないことは言うまでもありません。
教える側に「教え、育てよう」とする姿勢があっても、教わる側に「教えを請い、それを指導する方の力を借りて定着させ、伸ばし高めていこう」という心が無ければ、歯車が嚙み合わず、前進することは難しいでしょう。
どちら側の意欲も、とても重要になります。
もしもこれらが上手く嚙み合えば、結果は推して知るべし、ですね。
こうした両者の理想的関係がすぐには望めない場合でも、「教える側」「教わる側」のどちらか置かれた側に応じて自分自身のマインドセットを整えることで、相手側からより良いものを徐々に引き出せる可能性が出てきます。
また、最初に宣言しておくのも一つの手です。「私はあなたを伸ばしたいから、付いてきてね!」「どんどんと成長したいので、色々聞いてもいいですか?」のように、どちらの立場であっても先にメンションしておけば、両者の間にその空気感が生まれ、提案や質問がしやすくなるかもしれません。
また、そうしたコミュニケーションが盛んにとれるような相手には、教える側ならもっと目をかけたくなるものですし、教わる側も付いていきたくなるものですよね。その連続が、やがて理想的な教育環境へと変化していくこともあるでしょう。
リスキリングの時代だからこそ
昨今はリスキリング=学び直しの観点から、個人のスキルを多方面に伸ばすことが奨励されつつあります。
また欠けている分野に対して安易に外注して補ってもらうのではなく、外注先から自分たちの足りない部分を学び取り、内部の事情を良く知っている人間がそれを引き継いでいくことで集団の力を高めようという動きも盛んです。
持っているスキルを土台に、個々人が新しい能力を獲得する、あるいは教え合うことがより一般的になる今だからこそ、この「教え、育てる」本当の「教育」が必要なのかもしれません。
いかがでしたでしょうか?
皆さんの普段の生活の中にも当てはめられそうなことはございましたでしょうか?
スズキ的「教育」の中心的アイディアが、共有できましたら幸いです。
もしも「イイナ」と思ったら、早速実行をお忘れなく。
ではまた次回まで。

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