連載第2回「ニューロンという計算機」
東京大学教授(言語脳科学者)
酒井 邦嘉
この連載では、年齢とともに脳やその能力がどのように発達していくのか、脳のそれぞれの部位がどんな働きをするのか、その仕組みなどを初歩から解説しています。前回の掲載後にたくさんの質問を頂き、嬉しく思います。寄せられた質問の中から、前と話がつながるものを選んで、それに答える形で進めていきたいと思います。知らない言葉が出て来た時は、辞書などを使って調べてみて下さい。みなさんのご協力に感謝します。
Q:ニューロンのスケッチはどのような方法で観察したのか知りたいです。
A:顕微鏡を使って観察します。ニューロンの本体である細胞体の大きさは、数ミクロン(1ミクロンは1,000分の1ミリ)から0.1ミリほどでとても小さいので、脳組織を拡大しなくてはなりません。ただし、光の反射では表面が白く見えるだけですので、試料に光が通るようにする必要があります。それには脳組織をとても薄く切って、脳の切片を作ればよいのですが、脳はとても柔らかいため、切る前に組織を堅くします。それが「固定」と呼ばれる方法で、試料をホルマリン液(消毒や防腐剤として使うホルムアルデヒドの水溶液)に漬けた後にパラフィン(ロウソクやクレヨンの原料)を浸透させるか、試料を急速に凍らせるのが一般的です。
プロフィール
酒井邦嘉
専門は言語脳科学で、人間に固有の脳機能をイメージング法などで研究している。1964年、東京都生まれ。1992年東京大学大学院理学系研究科博士課程修了、理学博士。1992年東京大学医学部 助手、1995年ハーバード大学 リサーチフェロー、1996年マサチューセッツ工科大学 客員研究員、1997年東京大学大学院総合文化研究科 助教授・准教授を経て、2012年より現職。同理学系研究科物理学専攻 教授を兼任。2002年第56回毎日出版文化賞、2005年第19回塚原仲晃記念賞など受賞。著書に『言語の脳科学』(中公新書)、『脳を創る読書』(実業之日本社)、『芸術を創る脳』(東京大学出版会)、『チョムスキーと言語脳科学』(インターナショナル新書)、『脳とAI』(中公選書)、『科学と芸術』(中央公論新社)、『勉強しないで身につく英語』(PHP研究所)など。
酒井先生の研究に関する記事はこちら
(マンスリースズキより)
新刊『勉強しないで身につく英語』を発売
https://www.suzukimethod.or.jp/monthly/eigo.html
東京大学との共同研究の論文を発表
https://www.suzukimethod.or.jp/monthly/collabo4.html
共同研究を話題に、毎日メディアカフェ
https://www.suzukimethod.or.jp/monthly/220510-2.html
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この記事は皆様からの質問で成り立っています。たくさんの質問をお待ちいたしております!
※ 文中のイラスト最後の2つは植松有里佳先生にご協力をいただきました。ありがとうございました。
脳が持つ最大の特徴、それは使い方、育て方によって機能がカスタマイズされ続けること!この驚くべき能力「可塑性」について、スズキ・メソードと共同研究をしている脳科学者、酒井邦嘉先生が解説してくださいます。