
連載第6回 「脳の能力を引き出すには」
東京大学教授(言語脳科学者)
酒井 邦嘉
この連載では、年齢とともに脳やその能力がどのように発達していくのか、脳のそれぞれの部位がどんな働きをするのか、その仕組みなどを初歩から解説しています。今回もたくさんの質問を頂き、嬉しく思います。寄せられた中から関連したものを選んで、それに答える形で進めていきたいと思います。脳に関するいくつかの質問については、私の近著である『デジタル脳クライシス』(朝日新書、2024年)の中に答えやヒントが見つかりますので、あわせてお読みください。

Q1:
小2男子ピアノ科の母です。現在は、何かと思考力と言われますが、読み書き算術などやはり昔のやり方は優れていると感じます。日本人の遺伝子、環境などに合う教育法など脳の視点からありますでしょうか? また、iPad教育など学校教育も変化しておりますが、アナログの大切さを感じます。時代の変化を否定している訳ではありません。避けては通れない事ですが、脳が心配です。
A:
『デジタル脳クライシス』でも書いたこととも関係しますが、大切なご指摘なので、改めて整理してお答えしたいと思います。
まず、アナログ機器とデジタル機器を比べてみましょう。紙の本と電子書籍、万年筆(まんねんひつ)と電子ペン(スタイラス)、そろばんと電卓、ピアノとキーボード、楽器とシンセサイザー、といったもので、具体的に比較してみてください。総じて、前者のほうが優れているのですが、それはなぜでしょうか。
それぞれ具体的な特徴は異なりますが、そうしたアナログ機器が持つ特徴の根底にある共通性を正しく捉(とら)えることができれば、立派な答えになります。
たとえば、紙の辞書と電子辞書について考えてみましょう。見出し語にたどり着くまでは電子辞書のほうが確かに早いのですが、複数ある意味から適切な語義(ごぎ)や用例を見つけるには、紙の辞書を使うと圧倒的に早く、そして正確になります。それは紙面の全体を見渡すという「一覧性(いちらんせい)」を利用できるためです。
プロフィール
酒井邦嘉(さかい くによし)
専門は言語脳科学で、人間に固有の脳機能をイメージング法などで研究している。1964年、東京都生まれ。1992年東京大学大学院理学系研究科博士課程修了、理学博士。1992年東京大学医学部 助手、1995年ハーバード大学 リサーチフェロー、1996年マサチューセッツ工科大学 客員研究員、1997年東京大学大学院総合文化研究科 助教授・准教授を経て、2012年より現職。同理学系研究科物理学専攻 教授を兼任。2002年第56回毎日出版文化賞、2005年第19回塚原仲晃記念賞など受賞。著書に『言語の脳科学』(中公新書)、『脳を創る読書』(実業之日本社)、『芸術を創る脳』(東京大学出版会)、『チョムスキーと言語脳科学』(インターナショナル新書)、『脳とAI』(中公選書)、『科学と芸術』(中央公論新社)、『勉強しないで身につく英語』(PHP研究所)、『デジタル脳クライシス』(朝日新書)『AI脳クライシス』(集英社)など。

酒井先生の研究に関する記事はこちら
(マンスリースズキより)
スズキとの共同研究を進める東京大学酒井邦嘉先生の新刊書
https://www.suzukimethod.or.jp/monthly/sakai2024.html

新刊『勉強しないで身につく英語』を発売
https://www.suzukimethod.or.jp/monthly/eigo.html

東京大学との共同研究の論文を発表
https://www.suzukimethod.or.jp/monthly/collabo4.html
共同研究を話題に、毎日メディアカフェ
https://www.suzukimethod.or.jp/monthly/220510-2.html
酒井邦嘉先生の東京大学教養学部報内のWeb記事
https://www.c.u-tokyo.ac.jp/info/about/booklet-gazette/bulletin/648/open/648-1-01.html

今回の質問は『興味のない事はどうするとすぐに覚えられますか?』と『ぼんやりと特に何もしていないときの脳活動、デフォルトモード・ネットワークの子どもの脳への影響について教えてください』です!

今回の質問は『年齢が増えるとニューロンも増えるのでしょうか?』『ニューロンの数は決まっているのですか?それとも人によって違うのですか?』『ニューロンを増やすのに有効なことはありますか?また、ニューロンの働きに悪い影響を及ぼすものはありますか?』です。興味深い質問ばかりです!

酒井先生が脳に関する皆さんの疑問にお答えくださるシリーズ。今回の質問は『頭の良い・悪いって、脳科学的にはどういう状態のことを言いますか? 例えば、計算の得意な人と苦手な人の脳の違い、音楽や楽器演奏の得意な人とそうでない人の脳の違いはどんなところにあるのでしょうか?』

読者の皆さんからの質問に酒井先生がお答えくださるシリーズ。今回は①ニューロンはどのようにスケッチしたのか? ②ニューロンひとつひとつの働きは? の2つの質問への回答です!

脳が持つ最大の特徴、それは使い方、育て方によって機能がカスタマイズされ続けること!この驚くべき能力「可塑性」について、スズキ・メソードと共同研究をしている脳科学者、酒井邦嘉先生が解説してくださいます。

