
第11回 楽器の演奏・練習と子どもの発達
東京大学名誉教授
精神科医師・医学博士
佐々木 司
今回と次回で、バイオリンやチェロ、ピアノ、フルートなど、楽器の演奏や練習が子どもの脳と能力、メンタルの安定、さらにメンタルと関係の深い仲間作りにどう影響するかについて考えたいと思います。今回はまず、子どもの脳・能力との関係について、これまでの研究の結果を踏まえてお話いたします。なお本コラムは主に思春期について扱ってきましたが、今回は思春期に限らずご紹介したいと思います。
多くの複雑な要素からなる楽器演奏
具体的な「脳・能力」の話の前に、「楽器を演奏する」という動作がいかに多くの要素で成り立っているかをまず考えてみたいと思います。楽器演奏とその練習が、子どもの能力にどう影響するかをイメージしやすくなるからです。
一般に楽器の演奏では、右と左の手・上肢に全く違った動きをさせる必要があります。また手・上肢に加えて体幹や下肢、つまり体全体の動きと姿勢の保持を連動させる必要があります。ちなみに下肢については、ピアノのペダルのように、上肢と同様に動かす必要のある楽器もあります。
そのように体のあちこちを連動させて動かすことは、それだけでも難しいのですが、楽器演奏では、リズムやテンポに合わせて、正確なタイミングで動かす必要があります。加えて弦楽器や管楽器では、自分で正確な音程を作りながら演奏を続ける必要もあります。そのためには、自分の作る一連の音を聞き、それを記憶しながらそのあとの音を作り続けなければなりません。
佐々木司(ささき つかさ)
東京大学名誉教授、公立学校共済組合関東中央病院メンタルヘルスセンター長、精神科医師・医学博士。小学校入学後よりスズキ・メソードでヴァイオリンを習う。東京大学医学部医学科卒後、同附属病院精神科で研修。クラーク精神医学研究所(カナダ、トロント市)に留学。東京大学保健センター副センター長、同精神保健支援室長(教授)、同教育学研究科健康教育学分野教授などを歴任。思春期の精神保健、精神疾患の疫学研究、学校の精神保健リテラシー向上などに取り組んでいる。日本不安症学会副理事長、日本学校保健学会常任理事、日本精神衛生会理事を兼務。


