第3回 思春期の親子関係-その1
「自分イコール『パパ・ママの子』」の年齢を越えて
今回は思春期の子どもと親との関係を軸に、関連する話題について考えたいと思います。
多くの子どもにとって、小学校の低学年までは、「自分イコール『うちのパパとママの子』」で良かったわけですが、小学校高学年や中学生になると、そうはいかなくなってしまいます。一人前の大人へと向かう時期に入り、価値基準が変わっていくからです。
子どもにとって「パパやママが言うこと」の価値は下がり、同年代の仲間の中で「それなりに見られ扱われる立場を築き保っている」ことが自分のアイデンティティの支えとなっていきます。髪型・服装など外見の基準から行動・発言・信条に到るまで、価値基準もそこへと移っていきます。
突如「オヤジ・オフクロ」に
思春期の子どもにとって、自分がすでに「おこちゃま」でないことを示せているかは、とても気になることの1つです。このために親に対する呼び方を変える子どもも増えてきます。「パパ・ママ」など、いかにも子どもっぽい(と自分たちの基準では考えられる)呼び方を卒業するためです。ある日から突然「オヤジ・オフクロ」になったり、中には「うちのオッサン・オバハン」などと呼び始める子どももいます。つい先日まで「パパ・ママ」と呼んでもらっていた親としては、大変面喰う訳ですが、どうにもなりません。「我が子もそういう年齢に到ったのか」としみじみ諦めるしかないでしょう。
勿論、親の呼び方を変えない子どももいます。元々、思春期の仲間同士の基準で許容される呼び方をしていた場合などはその可能性が高いかもしれません。なお呼び方が変わらなくても親の方で焦る必要はありません。「ラッキー」と思っておけば良いでしょう。
こだわりの内容は世代ごとに変わる
プロフィール
佐々木司
東京大学教授、精神科医師・医学博士。小学校入学後よりスズキ・メソードでヴァイオリンを習う。東京大学医学部医学科卒後、同附属病院精神科で研修。クラーク精神医学研究所(カナダ、トロント市)に留学。東京大学保健センター副センター長、同精神保健支援室長(教授)などを経て、現在、同教育学研究科健康教育学分野教授。思春期の精神保健、精神疾患の疫学研究、学校の精神保健リテラシー向上などに取り組んでいる。日本不安症学会理事長、日本学校保健学会常任理事、日本精神衛生会理事を兼務。