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エル・システマの歴史 8

2026 4/24
エル・システマの歴史
アンサンブル エルシステマ エルシステマジャパン オーケストラ 中高生から 学び 教育 音楽
2026年4月24日
菊川穣

第8回 スズキ・メソードに期待すること

一般社団法人エル・システマジャパン 
代表理事 
菊川 穣

これまで不定期ですがエル・システマに関する話を共有してまいりました。今回で最後となる私からの投稿は、エル・システマジャパンの活動を14年間運営してきたものとして、スズキ・メソードにこれから期待することを書かせて頂きます。

Contents
  • アンサンブルを通じた幅広い関りを
  • 体験格差の是正と、子どもたちの居場所の確保を
  • 世界の音楽教育への更なる貢献を

アンサンブルを通じた幅広い関りを

1つ目は、日本各地で活動するユース、ジュニアオーケストラへのより積極的な関わりを求めたいです。スズキ・メソードの教室では、アンサンブルを大切にされ、発表会でも参加者が合奏体験をできるように工夫をされているところが多いと思います。

実際、先日参加させて頂いたトヨタアリーナで開催された第55回グランドコンサートでも、やはり、その一つのハイライトは、参加者総勢500人によるモーツァルトのジュピター交響曲の披露だったかと思いますし、その人数でそれを可能にする仕組みは素晴らしいと感動しました。

つまり、合奏体験を大切にし、一人一人の演奏技術を高めることは、これまでもスズキ・メソードの伝統と言えると思います。実際、地域で展開するユース、ジュニアオーケストラへの貢献は、スズキ・メソードの先生が中心となって活動しているところも見聞していますが、個人の関心によるところが大きいと感じます。

また、数は限られますが、学校単位で活動しているオーケストラもある中、そこへの積極的なサポートも期待したいです。まさに、エル・システマジャパンとしては、合奏体験を通して子どもたちの生きる力を育成できると考えており、自治体や他団体と協働することで活動を実施しておりますので、そうしたことは、現場のスズキ・メソードの先生にこそ、主導的に実践して頂きたいと希望します。

体験格差の是正と、子どもたちの居場所の確保を

2つ目ですが、1つ目のユース、ジュニアオーケストラが、子どもたちにとっての地域の居場所になるように、スズキ・メソードの各教室には関わって頂きたいと思います。

これまで記事でも触れていますが、エル・システマジャパンとしては、オーケストラや合唱という、仲間と共に音楽を紡ぎ出す場が、まさに、不登校や、性的指向の違い、海外にルーツがあること、障害がある、または、児童養護施設に暮らすことで、これまで機会がなかった子どもたちにとっての唯一無二の居場所になることを実感してきました。おそらく、スズキ・メソードの先生も、これまで指導される子どもたちの中には、困難な背景の子どもたちと遭遇する機会があったかもしれませんが、なかなか有料の習い事だと対応できないこともあったかと想像します。

体験格差が語られる中、そうした習い事への公的支援も自治体によってはあるかと思いますが、より発展させ、オーケストラ体験を、何らかの困難を抱える子どもたちに提供できれば素敵ではないでしょうか。

また、こうした地域でのオーケストラは、現在、国主導で進めている部活動の地域移行の受け皿の一つとしても有効ではないかと思われます。ただ、そこで重要なのは、想いを持った現場の先生には、しかるべき報酬が支払われることかと思います。もちろん、ボランティアでの関わりはあって良いですし、崇高なことですが、先生の善意に頼るだけの活動は持続可能ではないでしょう。ここでは、公益社団法人として寄付制度に優遇がある才能教育研究会として、教室の先生を支援する目的に特化した形で寄付金を集める等のアクションを行うことも一つの方向かと思います。

エル・システマジャパンの活動で指導ボランティア(フェロー)として関わる若者達を中心としたフェローオーケストラの第9回チャリティーコンサート@ミューザ川崎に参加する弦楽りぼん・児童養護施設プロジェクトの先生たちと子どもたち

世界の音楽教育への更なる貢献を

3つ目としては、スズキ・メソードが持つグローバルなネットワークを更に活かして、国内外の音楽教育へ更なる貢献を望みます。上述の第55回グランドコンサートにも海外からも多くの参加者がいましたが、既存の仕組みを通しての交流にとどまらず、更に多くのことが可能かと思います。

第2回のレポートでも書かせて頂きましたが、米国のみならず、世界各国のエル・システマプログラムの取組において、スズキ・メソードの先生や、出身者が果たしている役割は大きく、より社会的な活動としてのオーケストラを作ろうとする行動に欠かせない人材を供給しているのではないかと考えられます。

日本国内で上記の提案1、2を実施しようとする場合、この海外での豊富な経験を各教室の先生に共有することは、とても意味のあることかと思いますし、可能性を繋いでいくことになるのではないでしょうか。もちろん、海外諸国と日本では、取り巻く環境も、指導者育成の仕組みも異なりますが、社会や地域の活動に関心があり、何か貢献したいと思う人材には学ぶべきことが多いのではないかと感じます。

最後の投稿では、私が勝手に期待していることを書かせて頂きましたが、このWebマガジンFruitfulにてエル・システマや、その日本や他の国での展開について説明をさせて頂き機会に恵まれましたことに、心より感謝しております。

これからも、スズキ・メソードの更なる発展を祈っております。


編集部より

菊川様、これまで足かけ4年もの間、数々の示唆に富む連載を本当にありがとうございました。我々も、機会あるごとに読み返し、その意義の高さを学びなおしたいと思います。

連載は終わっても、エル・システマジャパンとスズキ・メソードがこれからも相互に高め合う存在であり続け、音楽に留まらない日本の教育と、子どもたちの成長に貢献していけるよう、手を携えていければと願っております。

エル・システマジャパンのさらなるご発展と、ご成功を心よりお祈りいたしております。


大槌エル・システマジャパンの皆さんがスズキ・メソード グランドコンサートに出演してくださった際の記事です!

スズキ・メソードグランドコンサートに向けて
https://www.elsistemajapan.org/single-post/20260312

2.000人の大合奏♪
https://www.elsistemajapan.org/single-post/20260408

プロフィール

菊川 穣(きくがわ ゆたか)

神戸生まれ。幼少期をフィンランドで過ごす。University College London地理学BA(1995年)、政策研究学(Institute of Education)MA(1996年)。(株)社会工学研究所を経て、国連教育科学文化機関(ユネスコ)南アフリカ事務所、国連児童基金(ユニセフ)レソト、エリトリア両事務所で、教育、子ども保護、エイズ分野の調整管理業務を担当。2007年に日本ユニセフ協会へ異動、J8サミットプロジェクトコーディネーター、資金調達業務に従事後、2011年より東日本大震災支援本部チーフコーディネーター。2012年、(一社)エル・システマジャパンを設立、日本ユニセフ協会を退職、代表理事に就任。公益財団法人ソニー音楽財団こども音楽基金選考委員会議長(2019年〜2021年)。公益財団法人音楽文化創造理事(2022年〜)。

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