第4回 思春期の親子関係-その2:子どもに注意する時の注意
東京大学教授
精神科医師・医学博士
佐々木 司
前回は、思春期の子どもといえども、必要なことについては、親からの注意や、時に叱責も不可欠なことをお伝えしました。ただこの年頃になると、小さい頃に比べて親の言うことをなかなか聞いてくれない子も少なくありません。そのような年頃の子どもに注意したり叱ったりする際、どんなことに注意すべきかを今回は考えたいと思います。
1.注意される身になって注意する
まず子どもに注意したり叱ったりする際、特に避けるべきことについて述べます。これは複数ありますが、どれにも共通するポイントは、「注意される身になって注意すべき」という点です。
注意したり叱ったりするのは、子どもの「良くないこと」や「できてないこと」についてでしょうし、以前に注意したことが改善されず、同じことをまた注意するという場合もあるでしょう。そうなると親の側もついつい力がこもって、きつい口調、烈しい口調となったり、お説教が長々と続いたりしがちです。
当然と言えば当然なのですが、注意される子どもの側にしてみれば、決して楽しいことではありません。きつさの度が過ぎれば、子どもの方もイライラして、つい反発したくなります。長々としたお説教では、聞く側の集中力も途切れます。丁度パーティーなどで長すぎる挨拶を聞かされているのと同じです。「早く終わってくれよ」と念じつつ聞く振りしかしてないので、「話が長かった」という印象以外は何も頭に残りません。これでは時間とエネルギーをかけて注意しても改善しませんし、親の側は「つい先日あれだけ注意したのに」と余計カッカし、子どもの側はウンザリして、どんどん負のスパイラルに陥ってしまいます。
2.「怒る」と「叱る」は違う
言うまでもなく「怒る」は自分の感情をぶつけること、「叱る」は冷静客観的に考えて相手に注意することです。「子どもに注意する」時は、当然ながら前者は避け、後者をすべきです。
ただ、頭では分かっていてもなかなか上手くいかない時も多いものです。
プロフィ-ル
佐々木司
東京大学教授、精神科医師・医学博士。小学校入学後よりスズキ・メソードでヴァイオリンを習う。東京大学医学部医学科卒後、同附属病院精神科で研修。クラーク精神医学研究所(カナダ、トロント市)に留学。東京大学保健センター副センター長、同精神保健支援室長(教授)などを経て、現在、同教育学研究科健康教育学分野教授。思春期の精神保健、精神疾患の疫学研究、学校の精神保健リテラシー向上などに取り組んでいる。日本不安症学会理事長、日本学校保健学会常任理事、日本精神衛生会理事を兼務。